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犬って安産じゃない！
Updated On
21.January.2003
数々のブリードと出産と向き合ってこられたブリーダーさんからのメッセージです。
「犬なんだから安産だ！」「犬は育児上手！」「里親なんてすぐに見つかる」なんてとんでもない！
想像以上に厳しい現実をご理解いただければと願います。
オゥシーの出産は少なくとも６〜７頭は生まれてきます。 そうやって「この人ならお任せできる」と決めた里親さんとは *ご感想や御意見は、掲示板をご利用ください*
あなたがもし、ブリードをしようとお考えなら、
まず、オゥシーの本(洋書、毛色のタブーが近いダックスの本など）を読み漁るなどして
オゥシー一般のことを、しっかり研究する必要があります。
もし、ブリードしようとする犬のブリードに適した時期、胎児がお腹にいる期間すら知らないのでは
残念ながら、あなたにその資格はありません。
生まれた子犬はあなたがすべて育てるのでしょうか？
もし里子にだすのであれば、
里親さんから、オゥシーの特徴や飼いかたや躾、病気のことなどを質問されたら的確に答えられますか？
もし、障害のある子犬が生まれたらどうしますか？
自分の手で、責任をもって育て上げる覚悟はありますか？
自分の手で、その子の運命を決める覚悟はありますか？
淘汰は対岸の火事ではなく、現実にあなたにも起こりうることなのです。
障害をもった命、発育不良、または、母犬の育児拒否の可能性もあります。
どんな命が誕生しても、子犬が社会化勉強を終了する最短でも３ヶ月の間、
あなたには、みっちりと子犬と向き合う時間、経済力、責任感も覚悟も必要です。
決して、仕事をしながらの片手間ではできません。本業を休むくらいの覚悟が必要です。
まずはご自身に問いてみてください。
それでも、あなたはブリードをできますか？
それでもブリードをしようと思われるなら、血統書でその母親となるべく固体のラインを調べる必要があります。
オゥシーは、まだまだ珍しい犬種ゆえ何代か前の先祖が同じラインなど近親交配の危険性もあります。
血族での交配は障害を持った子犬が出る確率が極めて高く、気質でもマイナス面が強く出てしまう可能性が高いからです。
その上で、適当なオスを探しておく必要があります。（スタンダード、気質、毛色、遺伝学的、ライン的なことを含む）
専門の業者さんやペットショップに依頼しても交配はできますが
オゥシーに関しては、それらも素人と同じようなものである可能性が高いので、
できれば人任せではなく、ご自身の足で
万一、子犬たちをすべて自分で引き取る事態になっても、ご自身が納得できるような交配相手を見つけるのが１番でしょう。
母犬となるべく固体の健康チェックも必要です。
一般的な全身状態、体温、尿検査から肝機能、腎機能、白血球、赤血球などの血液検査。
股関節形成不全症やコリーアイなど遺伝性の病気のチェック。
スメア検査やレントゲンでの子宮内蓄膿のチェック。
これらに何らかの異常が見つかれば、その固体はブリードするには値しないことになります。
もちろん、健康であっても、スタンダード的に外れていては同じことがいえるでしょう。
犬の発情は約６ヶ月前後に一度あり、ブリードの時期は出血の始まった日より１２日前後とされておりますが、
動物病院でスメア検査をしてもらい、排卵の日を特定し交配します。
卵子は1日、精子は２〜３日生きますので、排卵日とその２日前に交配させるのが理想です。
妊娠期間は６２日前後です。
あなたは「犬は安産だ」と信じ込み、安易な気持ちで交配、出産させようとはしていませんか？
いつ始まるかわからないのがお産です。
陣痛がはじまった時から出産まで、あなたは必ず付き添う必要があります。
もしもの時は、的確な処置ができますか？
出産は、野生に近い状態の犬でしたら、ほぼ自身でやってしまうのでしょうが
現実として、多くのことを人間に頼る「出産を自分でできない子」が増えてきています。
ひどい子になるとお尻に胎児をぶら下げたままウロウロしてることもあるそうです。
逆子や産道で詰まったりしても同じですが、
人の手で取り出してあげ、羊膜を破り身体を拭き、初乳を飲ませてあげないと、母子ともに命にかかわります。
未熟児状態で産まれた子犬たちやお乳への吸い付きが悪い子犬、母犬が育児に無関心な場合、人口授乳の必要があります。
もともと吸い付く力がないのですから、哺乳瓶は役に立ちません。
獣医さんで注入器を分けて貰い、３時間ごと、子犬の胃に直接ミルクを流し込まないといけません。
毎日の体重、体温、排便チェックも怠ることはできません。
（朝夕は必ず。場合によっては日に数回）
特に、体温管理は重要です。
体温を図り、冷たくなっているようであればお風呂で温め、よく吹き、ドライヤーで乾かし、
マッサージをして正常な体温を管理しなければなりません。
弱っている子でしたら、ちょっと目を離すとすぐに冷たくなり、たちまち死んでしまいます。
また、体温が正常でないと、いくらカテーテルでミルクを直接、胃に流し込んだところで吸収しませんので、
お腹ばかりが膨らみ、破裂してしまうかもと思うくらいになります。
胃に入れたつもりが、気管に入っていた場合、窒息してしまいます。（水におぼれた状態になります。）
私も長年お産とかかわってきて、悲しい思いをした経験が何度かあります。難産で苦労したこともあります。
第１子目と第２子目の間隔が非常にあき、獣医師の診断の結果、第３子以降を救うために促進剤を使うことになりました。
そのとき、この両方（特に第２子）に付いては、覚悟しておくようといわれました。
何とか出産したものの第２子は仮死状態で、必死で蘇生や人口授乳、排便など施しましたが天に召されてしまいました。
また、冬の出産では、母親の下敷きになって、それまで人一倍元気だった子犬が急に冷たくなっていた圧死も経験しました。
冬の寒い時期の出産はそれまでも経験しており、「我家の犬舎の造りの場合寒さには大丈夫」と過信しすぎていたようです。
大事な命、しかもまだ自分ではどうすることもできない本当にちっちゃな命ですから、人間が手を抜けば即、死んでしまいます。
「これくらいでいいだろう」「何とかなるよ」などという言葉は絶対にいけない厳しい現実がそこにはあるのです。
２週間ほどで目が開き離乳食がはじまると、それまで母犬がしていたことを人間が代わってしてあげないといけません。
例えば1日4回の離乳食、排便の処理（頭数が多いと、半日も放っておくと仔犬が糞まみれになります。）
それはもう生半可な気持ちではできるものではありません。
この頃になると、巣立ちの日にむけて、躾などの教育もしなければなりません。
大きな愛情をもって、時には厳しく、時には思いっきり遊び、堅実に社会性を身につけさせなければいけません。
万一の場合、すべての子犬を自分で引き取る気持で取り組まなければいけませんから
家族はもちろん、まわりの皆さんの理解やご協力は不可欠です。
あなたので手で不幸な命を送り出さないためにも、もう一度、ご自身とよくよく対話してみてください。
現実は、今、あなたが想像されているより数倍も厳しいことをご理解していただけたら幸いです。
また、この頃になると、里親探しも本格的になってくるでしょう。
ご存知のとおり、オゥシーの毛色はさまざまなので、時には、里親さんのご希望と一致しないケースもあるでしょう。
マール系は比較的、簡単にご縁があったとしても、トライ系（特に♂）は、なかなか難しいという現実があります。
しかも、これが１番たくさん生まれやすいのですから
前もって、トライ系の♂をご希望の里親さんが少なくとも４〜５名見つけておかないと
あなたの里親探しは暗礁に乗り上げるでしょう。
安易な里親探しは、子犬たちを不幸にしてしまう第一歩です！
もし、あなたがブリードされるなら、
たとえ素人さんでも、里親さんからしてみれば、あなたは立派なブリーダーさんでなければいけません。
もし里親さんから、オゥシーの特徴や飼い方や躾、病気のことなどを質問されたら、あなたは的確に答えられますか？
ブリーダー業は、精神面でもとても大変な職業です。
業として行うのであれば、割り切ってやらないとプロとはいえませんが、
そうなると子犬はただの商品、すなわち“物”として扱われてしまいます。
大変な思いをして子犬を産んでもらい、母犬とともに子育てしてきた私共にとっては、
子育てをしている最中から、その子犬たちと里親さんのご家族の明るい将来、幸せな生涯を思い描きながら世話をしているわけですから子犬が“物”として扱われるのは許されることではありません。
ですから私は、子犬のお問い合わせをいただいた方とはよくお話をさせていただき、
オゥシーのことを充分にご理解いただいた上でお譲りさせて戴いておりますし、
時にはお断りさせていただく場合もあります。
失礼とは思いながら、経済力などをお尋ねすることもあります。
みなさんもご存知でしょうが、犬を飼うには、かなりのお金が必要だからです。
不要なオヤツは与えないにしても、毎日の食事代、予防接種、フォラリア対策、予想外の病気や怪我をしないとも限りません。
また、定期的な健康診断も必要です。
子犬たちを養子に出した後も、心と体の両方の成長状態や、問題点、悩みごとなどを相談できる立場でなければいけないし
疎遠にならないように心がけることもブリーダーとしての使命だと思います。
我家で生まれた子犬は、どの子も分け隔てなく私の子供でもありますもの。
どうか、もしあなたがブリードをされるなら
もう一度、ブリーダーとしての責任をよくよくお考えいただきたいと思います。
きっと、今、ご想像されている２倍３倍以上の厳しい現実が待っています。
それでも、あなたはブリードをしますか？
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